まず、京極夏彦好きの人は絶対に読んでください。
怪談というテーマだけでなく、世界観にもどこか親和性を感じます。
怪奇という表現を通じて、人間の様々な情が描かれます。心理描写の巧みさもあります。
ただ、僕が声を大にして伝えたいのは、この作品が決して既存の作品の焼き増しではない、ということです。
この作品には創造が含まれています。
「怪談らしい」情緒ある日本語と、「怪談らしくない」切れ味鋭い外来語が、独自のテンポを刻んでいます。
「怪談らしい」古めかしい設定と、「怪談らしくない」現代的な設定が、唯一無二の世界を展開しています。
これが言葉を大切にし、新しいものを生み出す営み、すなわち「文学」なのだと思います。
こんなことを書くと作者様は怒るかもしれませんが、お忙しい方はこの作品を読む必要はありません。
読まないで、浴びてください。
それだけでもこの作品は十分に楽しめます。