大切なものはあるだろうか。
守りたいものはあるだろうか。
何物にも変えがたい大切なものと引き換えにしか、願いが叶えられないとしたら、あなたは一体どうするだろう。
皇女の自殺を皮切りに、運命の歯車は回り出す。か弱いようで実は芯の強い侍女と、悪戯っ子のような謎の少年、ひねくれ者の口の悪い騎士に、正義感の強いどこかとぼけた隊長、いわれなき罪を抱えた男に、孤独で寂しさばかりを募らせた美貌の王……。誰もが悩み、懸命にもがきながら前へ進もうとしている。何が正義かは、きっとそれぞれにしかわからない。
果実は、甘く芳醇だ。その豊かさは、何物にも変えがたい。けれど私たちは忘れてはならない。果実の恵みだけがこの世の全てではないということを。私たちは人として、誰かを愛する心を失ってしまっては生きてはいけないのだ。力に溺れたものは、いつか強い愛の前に敗れ去るだろう。
あなたはきっとこの物語の結末に涙する。