お菓子作りは何のため。
女の子なら誰でも好きなスイーツを、主人公の女の子は上手に作る。けれども、けしてパティシエを目指すことはしない。
自分が食べる為にしか、彼女は腕を振るわない。スポンジケーキのふわふわ感、クリームの滑らかさ、タルトのしっとりした歯触り、それらに囲まれて。華やかな甘い香りに包まれて。
けれども。
それは彼女が自分で満足するため。他人に食べてもらおうという気がなかった。
閉じこもって、それでいいの?
自分に問うも答えは出なくて、苦しくて。
そんなある日、彼女は一人の青年と会う。その青年の笑顔が、彼女の心に触れる。
恋という名のケーキを焼いて、愛という名のデコレーションで飾ろう。一歩踏み出す勇気は、きっと何より価値のある感情。