世の中には色いろな人がいる。高潔な人からろくでなしまでだ。そしてこの話の人物は正直な話ろくでなしだらけだ。守銭奴黄雲、好色家巽、そして大酒飲みの師匠、清流道人。しかしながらこの作品に出るろくでなしは本当に愛すべきろくでなしであり、読んでいるうちに本当に愛おしくなる。またそのキャラクターは語り手の軽妙な語り口にも影響を及ぼし、軽やかでまるで京劇のような語り口。
一方で氣に対しての設定や考察、そしてストーリーテリングは天下一品。魅力に溢れたキャラクターたちが舞台を縦横無尽に駆け巡る。もちろんコメディを名乗っているだけあってコミカルな描写は読み手を笑いへと引き込む。そのコミカルさを中国大陸ベースの雄大な世界観が支える…この計算づくされた小説は読み手を間違いなく幸福に誘ってくれる。ちょっと辛い時、冒険に出たい時。そんなときに読んでみたい一作だ。